2009年 12月 18日
レーベルの個性 |
ジャズファンも手当たり次第にレコード(CD)を買い漁っていた ”第一期” を過ぎると今度は
お気に入りの奏者を見つけてその人やその人関連作を ”芋づる式”に揃えるようになる。
これを ”第二期” としようか。
それも過ぎて ”第三期” に至る頃、彼はいっぱしの ”レコードマニア” と呼ばれるようになり
さらにはもう誰も手を出さないような分野(ESPやActualシリーズ完全制覇、とか東欧ジャズとか・・・・←愛好家の方いらしたらゴメンナサイ、ただの例えですから)に手を出す頃(第四期)にはもう立派な廃人、いやレコードジャンキーの誕生である。
いや、そうであった。
今日はその ”第三期” 症状の話。
”第三期” とは・・・・例によって僕の独断になるが・・・・レーベル買い、に目覚める時期である。
ご存知のようにレーベルとはジャズやクラシックに関係なく、レコード(CD)を制作する会社(配給、となるとまた別の話)で大は大手メジャーレーベルから小は個人自主制作まで様々だ。
これらの中でなんといっても面白いのが上のグループ分けでは中間に位置する ”マイナーレーベル” という存在、
聞こえは悪いが今風にいえば ”インディーズ”?かな。
ジャズの世界でもそれこそ草創期=78回転の時代から多くの個性豊かな ”マイナーレーベル” がファンを楽しませてきた。山椒は小粒でも・・・・とはまさにこの事。
某吉祥寺の大先生風に喝破すれば
マイナーレーベルは個性で聴け!!!
という事にでもなるだろうか。
有名な Blue NoteやContemporary,たとえばこの二つを例に出しただけでも、東海岸/西海岸 とか RVG/ロイデュナン といったキーワードのもといくらでもその ”個性” を対比出来る。
80年代、fusion音楽の台頭で一旦は ”死に体” であったjazzも90年代を迎える頃には4beat基調の主流的な物が復活、W・マーサリスの活躍(賛否両論あれど)もあって再び多くの新録音が世を賑わす事となった。
その大きな原動力になった、と僕は個人的に思っているのがまたもや クリスクロス(オランダ)やスティープルチェイス(デンマーク)といった欧州マイナーレーベルである。
この二つのレーベル、欧州というくくり以外にも多くの共通した ”個性” を持っていた。
それは
どちらも立ち上げ当初は往年のアメリカビッグネームの欧州移住組=S・チェイスではデクスター・ゴードンそしてクリスクロスではチェット・ベイカー等・・・・を起用し後にNYで多くの新人達のデビュー作を制作、さらには録音エンジニアにはあのRudy Van Gelder,後にまだ無名だったJim・Andersonを起用→サウンド面での充実も図った事。
そしてこれら欧州組に先行許すまじとようやく参戦してきた ”本家” アメリカはNYのレーベルがReservoir(レザヴォア) である。
(余談だが僕はこれもその名前からフランスあたりの欧州レーベルと思っていた)
このレーベルも上で指摘した点が見事にあてはまる。
うちのCD棚からいくつか引っ張り出してみた、結構あるなぁ。
(今回の写真はすべて公式HPから拝借しました)
RSR CD 121
Kenny Barron
The Moment
Kenny Barron
Piano
Rufus Reid
Bass
Victor Lewis
Drums
RSR CD 130
John Hicks
Beyond Expectations
John Hicks
Piano
Ray Drummond
Bass
Marvin Smitty Smith
Drums
このレーベルの個性:そのⅠ
ピアニストに対するこだわり。
この二名の他にもRob Schneiderman、Hod O'Brien、Dick Katz、Steve Kuhn・・・・いわゆる通好みなピアニストが目白押しで、しかもこれらをNY Piano Seriesと称してすべて良質なピアノトリオ仕立てで提供してくれている。
ちょうど西海岸のConcordレーベルが当初”ギターレーベル”と言われていたようにこのReservoirレーベルは”ピアノレーベル”と呼んでも差し支えないほどである。
以下はそんなピアノトリオシリーズのなかでも僕が超お気に入りのピアニスト・・・・
RSR CD 147
Pete Malinverni
This Time
Pete Malinverni
piano
Dennis Irwin
bass
Leroy Williams
drums
RSR CD 158
Pete Malinverni
A Very Good Year
Pete Malinverni
Piano
Dennis Irwin
Bass
Leroy Williams
Drums
Pete Malinverni、僕の大好きなピアニストである。
彼の美点は、決して ”弾きすぎない” 事、そして選曲の素晴らしさ。その渋いセレクションはB・シャーラップと双璧と思うが彼の場合一作の中に必ず一曲僕みたいなトラッド好きが泣いて喜ぶような ”アメ玉” が混ぜてあるところが泣かせる。
もうひとつ、オーディオ数寄者にとって嬉しいのはRVGとジムアン(略すなよ)の新旧両巨頭エンジニアの仕事がしかも同じパースネルのトリオで比較できる、という点だ。
アルバム的には上の二作品までがRVG、それ以降がジム・アンダーソンによる物となる。
これらを聞き比べるとディジタル時代となってそれまで弱点とされていたRVGのピアノの音が随分変わって(勿論良い方向に)いるのが分かるし、ジムアン(だから略すなって)は残響の処理等やはり相当RVG氏の影響を受けていたんだな、という思いがしたのである。
RSR CD 164
Pete Malinverni
Of One Mind
Pete Malinverni
piano
Dennis Irwin
bass
Leroy Williams
drums
RSR CD 171
Pete Malinverni
Autumn in New York
Pete Malinverni
piano
Dennis Irwin
bass
Leroy Williams
drums
RSR CD 177
Pete Malinverni
The Tempest
Pete Malinverni
piano
Dennis Irwin
bass
Leroy Williams
drums
そして・・・・・このレーベルにはもう一つの際立った特長があった。
それは個性:そのⅡ
バリトンサックスが好きっ!!!
ペッパー・アダムスやニック・ブリグノラと並んで重用されているのがこの人。
RSR CD 185
Gary Smulyan
hidden treasures
Gary Smulyan
baritone saxophone
Christian McBride
bass
Billy Drummond
drums
RSR CD 190
Gary Smulyan
more treasures
Gary Smulyan
baritone saxophone
Mike LeDonne
piano (tracks 1, 3, 4, 6, 8)
Dennis Irwin
bass
Steve Johns
drums
ここらあたりのワンホーン作を聴くとP・アダムズに通ずる 『寄らば斬るぞ』といった ”殺気” めいた緊張感が充満しているし
RSR CD 172
Gary Smulyan
The Real Deal
Gary Smulyan
baritone saxophone
Joe Magnarelli
trumpet & flugelhorn
Mike LeDonne
piano
Dennis Irwin
bass
Kenny Washington
drums
RSR CD 194
Joe Magnarelli
Persistence
Joe Magnarelli
trumpet
Gary Smulyan
baritone saxophone
David Hazeltine
piano
Peter Washington
bass
Kenny Washington
drums
こういったtpとの二管アンサンブルのリラックスした演奏は多分50~60年代のドナルド・バード/ペッパー・アダムズ双頭コムボの再現か? という見方もできるわけで・・・・・いずれにせよ聴き手が思わずニヤリ、とするような制作ポリシーにはマニアになればなるほど嬉しい事なのであった。
最近の不況のせいもあるのか・・・・・ここのところ ”新録” が途絶えているようだ。
ぜひともNYメインストリームの灯は消さないで欲しい、と切に思う。
by slapper1107
| 2009-12-18 11:38
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