2010年 02月 08日
風は東から吹いた |
昨日からの続き・・・・・
では、日本にこうしたスピリチュアルなジャズがあったのか?と問われたら
確かにあった、
と答えたい。
それは冒頭の写真にあるような EAST WIND レーベルの一連の作品群である。
そしてこのアルバムは’75に設立されての第一弾、プーさんこと菊地雅章(p)のその名もズバリ "East Wind"、レーベル名と同じアルバム名でその心意気が伝わってくる快作だった。
職人ハンク・ジョーンズ(p)を再び第一線に呼び戻したのは GJT =グレートジャズトリオ、R・カーター(b)T・ウイリアムズ(ds)だったがそもそもこの企画はトニーが言い出しっぺになってこのE・Wレーベルから産まれたものだったのである。
今でも覚えているがフュージョン全盛期のこの頃(70年代後半)ジャズ喫茶ではこのGJT関係盤、つまりナベサダさんとの共演盤(I'm old fashioned)とかヴィレッジヴァンガードのライブ盤(vol1&2)ばかりが矢鱈にかかっていた。ついでに話しが横道にそれるが・・・・、
オーディオマニアの方々が面白がっていたというか驚いていた、というか。
例の、トニー・ウイリアムズのバスドラ、あの ”轟音” はとてつもないマイクを使った、とかリミッターを外していた、とかいう録音上のギミックでは無しに ”元々でかい口径=24~26インチ の楽器を使っていた”、というのが真相。彼(トニー)はこの同時期A・ホールズワース(g)を押し立てたフュージョンバンド NEWLIFETIME もやっていたがその作品(CBS盤)でも同じバスドラの音がしている、つまりアコースティックなピアノトリオの中ではそれが目立っただけのハナシなのである。トラッドジャズ贔屓としては30年代のG・クルーパの26インチの方がもっと凄いですゼ(もち78回転前提)と嫌味のひとつも言いたくなるが・・・・。
話を戻す。
なにゆえこのEWレーベルが本邦スピリチュアルジャズの牙城たり得たか?
その回答はやはり↑のプーさんの表題作にある、と見た。
どうしても海外制作の日本盤=海外ビッグネームを助っ人に話題づくり、という意地悪い見方をしてしまいがちでこのEWでも上記GJT関連作がそうなる(これに関しては内容は素晴らしかったのだが)。
この作品でも、プーさんは当時NY在住 かつ引退?中とはいえマイルスに最接近していた時期だったからその中身はとんでもないモノになるのでは、という憶測は有った。
しかしフタを開ければフロントラインは日野/峰の日本人、リズム隊はロン&トニーのビッグネームではなくジュニ・ブース(b)エリック・グラバット(ds)というマッコイ~WRラインという人選。そして純アコースティックな大曲主義、と言ってもよい内容。
聴き手としてはこうして ”二重に” 裏切られているのだが90年代での再評価を経てみると今これほどスピリチュアル、という視座にピッタリはまる作品は無いのではないか。決して ”オリエンタルな曲調” とか ”徹底したモーダルな構成” といった上辺だけの特長で論ずるつもりは無い、が、ただただ日本人にしか創り得ない音楽性が僕にはこれらEW諸作から見えるのである。
1970年代後半、僕は貪るようにこれらEW銘柄を追っかけていた。
以下ランダムに・・・・・
日野さんの作品も多い。
もっとも熱かったのがこれ
とは言っても 青白く燃える炎だ
富樫作品のある意味集大成
日本的ミニマリズム・・・・こういうのが外国人には ”禅” と思われるのか?
この当時('75) ”スピリチュアルジャズ” なる言葉は無かった筈
サラーム、とはスワヒリ語で ”平和” という意
当時貞夫さんの作品にはスワヒリ語タイトルが頻出する
メンバーだった本田さんも感化されていたのか?
否、彼はアフリカの先に結局日本を見ていたのだ
マッコイ(タイナー)との比較が愚かしいくらいの傑作
冒頭作の ”意趣返し” のような一作
東風(こち)というのが今度はバンド名となる
和楽器の使用が話題となったが
それ以上に大胆かつ驚かされたのがアンソニー・ジャクソンのBass
空間を切り裂いて、いる
一転して当時の最先端
を切り取った作品
NY在住の大野俊三氏(tp)
ギル・エヴァンス人脈の面子だが、R・ヘインズが”切れ”まくっている
(ジャケットは何で代えてしまったのだろう?)
レジー・ルーカス(g)!!
これもこの時代ならでは、だ。
まるで今にもマイルスが『ぺっ』と出てきそうで恐いwww.
昨日のBlack Jazzレーベルから出ていても驚かないであろう一枚
内容も肉薄、どころか凌駕しているかも知れない
SOLID 峰厚介
今回ずっとEW諸作を聴き返して来て一番 ”引っかかった” 盤
エフェクトをかけたソプラノサックスが空間を泳ぐ・・・・
同時期のゲイリー・バーツ(as)を引き合いに出すのも馬鹿らしくなる
これに比べたら後にブレイクしたネイティブサン、何とつまらぬ演奏か
まだまだいくらでも紹介したいが・・・・
ところで
これらの ”仕掛け人” の伊藤 八十八プロデューサー も我が早大ニューオリのOB,
僕は何て凄いクラブに居たのか!! と今さらながらに奮い立つ思いがした。
by slapper1107
| 2010-02-08 00:28
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