2010年 08月 18日
夏休み読書感想文 |
『上野桜木ジャズ日記』 安原 顕 音楽之友社
スーパーエディター、ことヤスケン氏である。
その編集者としての仕事振りは ”遅れて来た読者” である僕は知らない。
第一印象としてはとにかく沸点の低い、とても短気で感情的な人だな・・・・というのが
正直なところで、事実その罵倒、にも置き換えられるような ”批評” はある領域を
超えると快感めいてもくるのだった。
ただ、色々この人の文章に接したりラジオでの ”生声” を聴いたりするとこうした
”キャラ付け" はレトリックの一部とすらなっていて ”地” であるシャイな部
分の裏返しとも取れるのだ。
(ミュージックバードのジャズ番組では ”暴走” する寺島(靖国)氏を逆に制止す
る立場だったのが可笑しい)
目次から小見出しをランダムに拾い出してみる、
・・・ヒトラーが禁じた退廃音楽家たち>二人の天才阿部薫×高柳昌行>中古ピアノト
リオ、宝の山で感動>非常勤講師なんぞやるんじゃねえぞ>世界の新人、すべて読み、
聴き、観たいとの強欲・・・・・・・・
この通り分厚い本だが、何処をいきなり開いても面白く読める仕組みになっている。
失礼ながら
ヤスケン氏、本当のところはジャズにそれほど精通してはいなかったようだ。
しかしこの著作の如く圧倒的乱読多聴でまるで対象物を ”ねじ伏せる” が如く前進
してゆく。
『他人の10倍読んで100倍聴け! 能書きはその後だ』
こう、大声で喝破しているのが聞こえてくるようだ。
圧倒的多数、というのは良くも悪くもそれだけである種の ”意味” を持つようにな
る・・・・
僕はこの著作、というよりもヤスケン氏の姿勢そのものからこうしたメッセージを受け
取った。
余談だが
もともとジャズは門外漢(現代音楽から入門)、短期間で驚くほどの集約的体験をして
見事その本質ににじり寄った・・・・・・・
こういう経歴を見て僕はもうひとり、植草甚一氏との共通点を強く意識した(奇しくも
お二人とも早稲田文科)。
ただヤスケン氏にはJJ氏には無い ”ジャズへの愛情” があったように思う。
村上春樹氏との確執(原稿流出etc)で 晩節を汚す形になったのは残念極まりないが
、僕はそれでもヤスケン氏が大好き、である。
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by slapper1107
| 2010-08-18 00:13
| 本・読書